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筋ジストロフィー 資料から抜粋

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィー


デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーは、体幹に最も近い筋肉に筋力低下を引き起こします。


•これらの筋ジストロフィーは、筋肉の機能に関与している遺伝子の異常によって発生し、小児期や青年期に筋力低下を引き起こします。男児に発生する場合がほとんどです。


•どちらの筋ジストロフィーも、筋力低下を特徴とします。


•診断は、血液および筋肉組織サンプルの検査結果に基づいて下されます。


•理学療法と、ときにプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)の投与や手術が、ある程度役立ちます。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋ジストロフィーのうち最も多くみられる最も重症なタイプで、幼児期に発症します。ベッカー型筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィーと密接に関連していますが、発症時期が青年期とより遅く、引き起こされる症状もより軽いものです。これらの筋ジストロフィーは、男児に発生する場合がほとんどです。平均すると、デュシェンヌ型筋ジストロフィーは出生した男児の4700人に1人、ベッカー型筋ジストロフィーは出生した男児の3万人に1人の割合でみられます。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーを引き起こす遺伝子の異常は、ベッカー型筋ジストロフィーを引き起こす異常とは異なりますが、どちらも同じ遺伝子が関係しています。これらの形質を発現する遺伝子は劣性遺伝し、X染色体上に保有されます。そのため、女性の場合は異常遺伝子を保有することはあるものの、片方のX染色体の遺伝子に異常があっても、もう一方にある遺伝子が正常であれば、異常が補われるため、発症することはありません。しかし、男性にはX染色体が1本しかないため、異常遺伝子を親から受け継ぐと発症します( 遺伝形式 : X連鎖遺伝を参照)。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児では、筋肉細胞の構造を維持するために重要なジストロフィンという筋肉タンパク質がほぼまったくありません。ベッカー型筋ジストロフィーの男児では、ジストロフィンはつくられますが、そのタンパク質の構造が変化しているため、本来の機能を果たすことができないか、ジストロフィンの量が不十分です。


症状
デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーによる主な症状は筋力低下で、心筋や呼吸のための筋肉の筋力低下が含まれます。


デュシェンヌ型筋ジストロフィー
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、2~3歳で発症します。最初の症状は、発達の遅れ(特に歩き始めるのが遅れる)のほか、歩く、走る、飛び上がる、階段を昇るといった動作の困難です。患者は転倒することが多く、しばしば腕や脚の骨折を起こします。患者はよたよたと歩き、つま先で歩くことがよくあり、床から立ち上がるのが困難です。


通常は、その後に肩の筋力低下がみられ、着実に悪化していきます。筋力低下に伴って筋肉が大きくなりますが、異常な筋肉組織は筋力が強くありません。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児では、心筋も徐々に大きくなり筋力が低下し、心拍に問題が起こります。心臓の合併症は、14歳までの患者で約3分の1に起こり、18歳以上の患者では全員に起こります。しかし、患者は運動することができないため、心筋の筋力が低下しても、病気が進行するまで症状は起こりません。患者の約3分の1では、主に言語能力に影響する、軽度で進行しない知的障害がみられます。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーの男児は、通常は腕や脚の筋肉が関節の周囲で拘縮するため、肘や膝を十分に伸ばせなくなります。最終的には脊椎が異常に曲がります(脊柱側弯症)。脂肪などの組織が、特定の大きくなった筋肉群に置き換わり、これは特にふくらはぎの筋肉でみられます。この病気のほとんどの小児は、12歳までに車いすでの生活を余儀なくされます。呼吸筋の筋力低下が進むと、肺炎などの病気にかかりやすくなり、ほとんどの患者が20歳までに死亡します。
ベッカー型筋ジストロフィー
ベッカー型筋ジストロフィーの男児では、筋力低下がデュシェンヌ型ほど重度ではなく、最初に症状が現れる時期も、約12歳と少し遅くなります。患者は通常、少なくとも15歳までは歩くことができ、多くの患者が成人期になっても歩き続けられます。筋力低下のパターンはデュシェンヌ型筋ジストロフィーのものに類似しています。ただし、車いすでの生活を余儀なくされるのはごくわずかの患者です。ほとんどの患者が30代または40代まで生存します。


診断
医師は特徴的な症状(例えば男児の幼児で筋力低下やその進行がみられる)に基づいて筋ジストロフィーを疑い、特に男児に筋ジストロフィーの家族がいるか原因不明の筋力低下がみられる場合に疑われます。クレアチンキナーゼという酵素の濃度を測定する血液検査が行われます。クレアチンキナーゼが筋細胞から漏れ出て、血中濃度が異常に高くなります。ただし、他の筋肉の病気でも血液中のクレアチンキナーゼの濃度が高くなることがあるため、この酵素の濃度が高くても筋ジストロフィーであるとは限りません。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断は、血液検査でジストロフィンというタンパク質をつくる遺伝子の欠失または異常が示され、筋肉組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる筋生検で筋肉中のジストロフィンの量が極端に少ないことが明らかになった場合に下されます。顕微鏡検査で筋肉を観察すると、壊死組織や異常に大きな筋線維が認められます。


同様に、ベッカー型筋ジストロフィーの診断は、血液検査でジストロフィンをつくる遺伝子に異常があるか量が非常に少ないことが示され、筋生検で筋肉のジストロフィンが少ないことが明らかになれば下されますが、筋肉のジストロフィンはデュシェンヌ型筋ジストロフィーほど少なくはなりません。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーの小児は、心臓の問題を検出するために心電図検査( 心電図検査を参照)と心エコー検査( 心エコー検査とその他の超音波検査を参照)を受けます。これらの検査は、小児に診断が下された時点か、または6歳までに行われます。
デュシェンヌ型またはベッカー型筋ジストロフィーの患者の家族が、異常な遺伝子を検出するために検査を受けることがあります。胎児に対する出生前検査を行えば、その子が罹患する可能性が高いかどうかの判断に役立ちます。


治療
デュシェンヌ型筋ジストロフィーもベッカー型筋ジストロフィーも、治癒させることはできません。筋肉が関節の周囲で永続的に拘縮するのを予防するために、理学療法や穏やかな運動、ときには足関節装具の夜間の装用が役立つことがあります。歩いたり立ち続けたりする能力を維持するために、下肢装具が一時的に役立つことがあります。硬くなり痛みを伴う筋肉を緩めたり、脊柱側弯症を元に戻したりするために手術が必要になることもあります。患者の男児はあまり活動的ではないため、必要なカロリーは少なくなります。そのため、食べ過ぎないように注意すべきです。


呼吸に問題がある場合は、呼吸を助ける特殊なマスクを着用することがあります( 代替手段を参照)。そのマスクでは呼吸の補助が不十分な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開という処置)、合成樹脂製のチューブを気管に直接通すこともあります。チューブは人工呼吸器に取り付けます。気管切開によって、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者が20代まで生存できることがあります。心臓の問題がある小児には、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やベータ遮断薬といった薬が投与されることがあります。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの5歳以上の患者で、顕著な筋力低下がある場合には、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)が投与されることがあります。コルチコステロイドの一種であるプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)を毎日服用します。これにより一時的に筋力の改善がみられることがあります。しかし、長期間使用すると、多くの副作用( コルチコステロイドの使用法と副作用を参照)が現れます。プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)は、ベッカー型筋ジストロフィーの小児に対する治療としては、十分に研究されていません。
筋肉がジストロフィンをつくれるようにすることで、筋力低下を改善しようとする遺伝子治療が研究されていますが、まだ利用できません。家族は、子どもに筋ジストロフィーの形質を引き継ぐリスクの評価をするため、遺伝カウンセラーに相談するべきです。